人事制度とは働き方改革

残業時間をいかに削減していけばよいのか?~2020年4月より中小企業にも残業規制がかかります~

残業時間をいかに削減していけばよいのか?~2020年4月より中小企業にも残業規制がかかります~

2020年4月から中小企業にも「働き方改革による残業時間の制限措置」が始まります

上図のように法律によって残業時間が制限されることになりました。違反した場合には、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。
一生懸命働いた結果、書類送検されてしまった…などということになりかねません。今後、より積極的な残業時間削減のための取り組みが必要になってくることになります。

長時間労働を解消していくためには

私のクライアントの職員さんの中には今でも残業時間が毎月100時間を超えるような働き方をしている方がいます。
例えば「仕事のできる会社の中枢を担う人」が長時間労働になることが多く、その人達の労働は代替がきかないため必然的に仕事量が増え、長時間労働になってしまいます。
その他にも長時間労働になりがちな人、なりがちな職場が存在します。列挙すると以下のような人や職場が長時間労働になりがちです。

長時間労働になりがちな人・職場

・企業の中枢を担う有能な人材⇒代替がきかない
・労働集約型産業で働く人⇒人手不足のしわ寄せ
・中間決算や期末決算時に納期が集中している企業⇒顧客の無茶ぶりに対応
・労働者本人が長時間労働を望んでいる人⇒お金に困っている人(金銭的問題)
・業界自体が長時間労働の職場⇒慣習としての長時間労働が定着している

日本商工会議所のアンケート調査と似たような結果となりました。

「時間外労働の上限規制」への対応にあたっての課題

※日本・東京商工会議所「『働き方改革関連法への準備状況等に関する調査』集計結果」より

長時間労働になってしまう課題を解決していくためにはどのような対策を講じていけばよいでしょうか。
解決するためには「人手不足を解消し、有能な人材を育成・採用し、悪しき慣習を改める意識改革を行って、顧客の要望に合わせた勤務体系を構築していくこと」が必要です。

1.人手不足解消のために働きやすい職場環境を整備する
2.有能な人材の働き方を見直す
3.慣習を改めるために個々人の意識改革を進める
4.納期の集中など繁閑の差がある職場における勤務体系を見直す

~魅力ある職場環境を整え労働市場にアピールしましょう~

2020年1月、お正月明けに訪れたハローワークの求人窓口がパンクしていました。
求人件数が多すぎで仕事が一向に終わらないと求人窓口の方がぼやいています。
全国平均の有効求人倍率が2020年1月現在1.49倍。100人の求職者に149の仕事を紹介できるという状況です。

今から10年前、平成22年1月の有効求人倍率が0.53ですから、労働市場の様相は当時とは全く違うものになっています。10年前は選ばれる立場であった労働者ですが、現在は逆に仕事を選ぶ立場になっています。仕事を探している人だけではなく、現在働いている人も転職しようと思えば難しくない売り手市場になっています。

このように雇用情勢が変化する中、企業も意識を変えていかないとなりません。労働者から選ばれる企業にならなくては現在働いているスタッフも退職してしまう可能性があります。そして新たな人材を雇おうと思っても応募すらないという状況になりかねないのです。魅力的な労働条件を整え、マーケットにアピールする必要があります。

魅力ある職場とは

職員が定着する職場、魅力的な職場とはどのような職場でしょうか。
長年にわたり数千人の退職手続きを行いながら、どのような時に人は退職するのかということを考察しつづけ一つの結論に達しました。
ヒントをくれたのはマズローの欲求5段階説です。ご存じの方も多いと思いますが、人は本来5つの欲求をもっているという説です。下段から上段に向かってより高次元な欲求となっていきます。

マズローの欲求5段階説を応用した篠原流職員定着5段階説

自己実現の欲求 自分の夢や理想を叶えたいという欲求
自我の欲求   承認の欲求 誰かに認められたいという欲求
社会的欲求   コミュニティに帰属したいという欲求
安全の欲求   外敵に殺されることがない
生理的欲求   衣食住や睡眠、排泄の欲求

これらの欲求が満たされる職場環境を全て整えられれば、職員は「満足」することになり職場に定着します。
職員の生理的欲求を満たすためには「給与・福利厚生」が必要です。
職員の安全の欲求を満たすためには「事業の継続性・安定性」が必要です。
社会的欲求を満たすためには良好な「人間関係」と「風通しのよい職場」が必要です。
自我の欲求を満たすためには「適切な評価」を行うことが必要です。
そして自己実現欲求を満たすためには、職員一人一人に対し積極的な「傾聴」に努め、各々の夢や理想が何かを理解し、それを手助けできるように心がけることが大切です。

これらの5つの欲求全てをバランスよく保つことが重要です。給与がいくら高くても人間関係が悪ければ退職してしまうことがあります。逆にどれほど人間関係がよくても給与が低ければ退職してしまうこともあります。
私が考える魅力的な職場とは「適切な評価を行い、働きに見合った給与を支給し、事業内容が継続して安定しており、社内の風通しがよく、経営者が職員の理想に耳を傾ける」職場です。
時間はかかりますが、このような環境を整えてしまえば人手に困るということは無くなっていきます。

有能な人材のマネジメント

「仕事ができる人に仕事は集中する」という習性のために有能な人材に仕事が集中してしまうということがよくあります。
そういう人は仕事があればあるほどノウハウを吸収し成長していきます。
常人の倍の能力で倍の時間働いていれば成長スピードは半端ありません。
そのようなスピードの中にいるとやがて普通の人の働き方がとてもスローに見えてきます。
人に任せるより自分がやった方が早いし確実。となれば、ますます自分で仕事を抱え込むことになっていきます。
ずっとその馬力で働ける人もいますが、働きすぎてメンタルを病んでしまったり、加齢とともに身体的な不調に陥ってしまう人もいます。
ここ十数年の間に長時間労働が心疾患や脳血管疾患を引き起こすことが医学的に証明されたり、過労死や過労自殺の悲惨さが認知されるようになりました。
今回の働き方改革の残業規制はまさにこの過労死認定基準をもとにして作られています。

有能な人材に自ら代替要員を確保させる

自分で望んで働いているのだから放っといていいのだろう…というわけにはいきません。
会社には労働者の健康に対して「安全配慮義務」があります。労働者の健康を損なうような仕事をさせてはいけません。やれとは言ってなかったとしても黙認していれば、「黙示の指示」があったとみなされます。
過労死や過労自殺を出さないためには、経営者が時間管理を適切に行い、長時間労働になっている職員の仕事を見直す必要があります。

有能な人材の長時間労働を減らすためには、その自在が他者に「任せる」ということが重要です。
抱え込みすぎている仕事の割り振りを指示し、有能な人材自ら部下を育成させ代替要員を確保させるようにさせてください。
また仕事に緩急をつけることが重要です。例えばあるプロジェクトのために2カ月間必死で働いた後の1カ月は通常の勤務にするというように、ずっと長時間労働にならないように配慮することが必要です。

固定残業制を提案する ~意識改革~

「働き方改革」という名称は非常に効果的だったと思います。当初は誰もがそんなことはできない、無理だと言っていた改革ですが、始まってみれば嘘のように皆さん取り組んでいます。労働者も経営者も「働き方改革」という言葉の力に動かされたように感じています。残業規制については昨年度から頻繁に問い合わせがあり、中小企業であっても一足先にすでに取り組んでいる企業が多数みられます。

昨年、私が相談を受けた際、労働者の意識改革のために導入を提案したのは、月30時間の「固定残業制」です。固定残業制とは労働者個人と会社との間で雇用契約を結び例えば「月30時間分の残業代として60,000円支払う」というように残業時間が30時間以下であれば残業代を固定的に支払うという方法です。
当然ですが30時間を超えれば超えた分の残業手当を支払うことになります。この固定残業制のよいところは、明確に30時間までの残業時間に抑えるようにいう意思表示を会社が従業員に伝えることができることです。
また固定的に残業代が払われていますから残業が減ったとしても給与は減額されることはなく毎月定額の給与となるため(30時間を超えない限り)生計が安定しやすくなります。
固定残業制を採用するためには、必ず雇用契約書によらなければなりませんので、雇用契約書を取り交わす際に、従業員全員と個別に話をし、働き方に対する意識改革を行いましょう。

働き方改革法でフレックスタイム制の清算期間が3ヵ月に延長されました

フレックスタイム制…実はとても使える制度です。弊社でも導入しています。
弊社のパートさんの勤務時間は9:00~16:00(休憩12:00~13:00)の1日6時間勤務ですが、お子様の用事や急な学校からの呼び出しなどの影響のために、なかなか定時通りに働くということができない方がいました。そこで導入したのがパートさんのためのフレックスタイム制です。
コアタイムを9:30~15:30とし、フレックスタイムを9:00~16:30としました(休憩時間の短縮も認めました。通常は休憩60分ですが、必要に応じて休憩時間を45分とすることを認めました。従って15分遅刻してもお昼休みを15分短縮すれば16時に帰れます)。
お子様の忘れ物を届けなくてはならなくなった…。習い事のために木曜日は15:45に帰宅したい…。個々に15分単位で宣言した上で労働時間を決めてかまわないという内容で労使協定を結びました。わずか15分、されど15分。時間に対する裁量権があることで働き方の自由度は増したと思います。

フレックスタイム制を上手に利用して繁忙期の残業時間を減らしましょう

フレックスタイム制の清算期間延長のイメージ

とても便利なフレックスタイム制度ですが、昨年度から更に融通がきくようになりました。
1カ月に限られていた清算期間が、昨年度から最長3ヵ月に延長することができるようになったのです。
したがって月をまたいで労働時間を清算できるようになりました。
3月と9月の決算時は納期が集中してしまい労働時間が長くなってしまう。12月と3月は物量が多いため仕事が終わらない等など、繁忙の時期が推測できる企業では働き方改革関連法で導入された「3カ月フレックスタイム制」導入を検討してみるとよいかもしれません。

上図のように、改正前の1カ月清算ですと毎月残業時間を清算しなくてはなりませんが、清算期間を3ヵ月にすれば3ヵ月のトータルの労働時間で残業時間を清算できることになります。
繁忙がある時期に集中する職種においては、時間管理を上手に行えば残業時間の削減を行うことができます。
フレックスタイム制の導入方法については別の記事をUPする予定です。